
関節拘縮予防と改善:アイウォークフリー使用中のケア方法
2025年10月5日「ギプス固定中に関節が硬くなってしまわないか心配…」「アイウォークフリーを使っていても関節の動きが悪くなってきた気がする」関節拘縮は、ケガや固定による最も避けたい合併症の一つです。
理学療法士として数多くの関節拘縮の予防・改善を指導してきた経験から、アイウォークフリー使用中でも実践できる効果的な関節可動域維持・改善方法を詳しく解説します。
関節拘縮発生のメカニズム

拘縮発生の病理学的過程
急性期変化(1-2週):
• 筋スパズム:疼痛による反射性筋収縮
• 浮腫形成:炎症による組織内液貯留
• 線維芽細胞活性化:創傷治癒過程の開始
• コラーゲン産生増加:修復組織の形成
• 関節内環境変化:滑液の性状・量変化
亜急性期変化(2-6週):
• 筋短縮:持続的筋収縮による筋長短縮
• 結合組織癒着:筋膜・腱・靭帯間癒着
• 関節包萎縮:不動による関節包容量減少
• 軟骨変性:栄養不良による軟骨変化
• 滑膜癒着:滑膜ヒダの癒着・線維化
慢性期変化(6週以降):
• 線維化:成熟したコラーゲン線維形成
• 石灰化:異所性骨化・石灰沈着
• 関節変形:骨・軟骨の形態変化
• 筋萎縮:不使用による筋量・筋力低下
• 機能的拘縮:複合的な可動域制限固定化
部位別拘縮リスク
足関節(最高リスク):
• 背屈制限:下腿三頭筋短縮・アキレス腱拘縮
• 底屈制限:前脛骨筋・足趾伸筋短縮
• 内外反制限:距骨下関節・横足根関節拘縮
• 足趾拘縮:MTP・IP関節の屈曲拘縮
• 発生率:固定後2-3週で70-80%に何らかの制限
膝関節(高リスク):
• 屈曲制限:大腿四頭筋短縮・膝蓋上嚢癒着
• 伸展制限:ハムストリングス・後方関節包短縮
• 膝蓋骨可動性低下:膝蓋大腿関節拘縮
• 脛骨回旋制限:脛骨大腿関節拘縮
• 発生率:固定後4-6週で50-60%に制限出現
股関節(中等度リスク):
• 屈曲制限:腸腰筋・大腿直筋短縮
• 伸展制限:股関節前方関節包拘縮
• 外転・内転制限:内外転筋群短縮
• 回旋制限:深層外旋筋・関節包拘縮
• 発生率:長期固定で30-40%に制限
アイウォークフリーによる拘縮予防効果

従来の固定・安静による問題
完全安静時の拘縮進行:
• 不動期間:拘縮進行速度に直接関与
• 固定肢位:不適切な肢位での拘縮固定
• 循環不良:血流低下による組織栄養不良
• 感覚入力遮断:固有感覚・触覚入力の欠如
• 心理的影響:活動制限による意欲低下
アイウォークフリーの拘縮予防機序
iWALKFree 3.0による予防効果:
• 早期活動:患側保護下での早期活動開始
• 自然な肢位:生理的肢位での関節保持
• 循環促進:歩行による血流・リンパ流改善
• 感覚入力維持:健側からの振動・圧覚刺激
• 心理的効果:活動性維持による積極性向上
関節への間接的効果:
• 重力効果:立位での重力による関節伸展
• 筋ポンプ作用:筋収縮による循環促進
• 神経筋促通:正常運動パターンの維持
• ホルモン効果:活動による成長因子分泌
• 代謝促進:全身代謝向上による治癒促進
段階別関節可動域維持プログラム

Phase 1:急性期予防(0-2週)
目標:
• 急性期拘縮の予防
• 疼痛・炎症のコントロール
• 基本的関節可動域の維持
• アイウォークフリー適応
患側関節ケア:
1. 受動的関節可動域運動(1-7日目)
• 足関節:背屈・底屈(疼痛範囲内)
• 足趾:MTP・IP関節の屈伸
• 膝関節:軽度屈伸(医師許可範囲)
• 実施頻度:1日3-4回、各関節5-10回
• 注意事項:無理な可動域拡大は禁止
2. 循環促進運動(1-14日目)
• 足趾運動:グー・チョキ・パー運動
• 足関節pumping:背屈・底屈の反復
• 下腿マッサージ:軽いリンパドレナージ
• 挙上:患肢挙上による浮腫軽減
• 実施頻度:1時間毎に3-5分
健側・全身活動:
• アイウォークフリー歩行:1日30-60分
• 健側関節運動:股・膝・足関節の全可動域運動
• 体幹運動:座位・臥位での体幹ストレッチ
• 上肢運動:肩甲骨・肩関節の可動域維持
Phase 2:回復期改善(2-8週)
目標:
• 関節可動域の積極的改善
• 機能的可動域の獲得
• 日常生活に必要な柔軟性確保
• 筋長・関節可動域のバランス改善
進歩的関節可動域訓練:
1. 自動介助運動(2-4週目)
• 患者参加型:自身の筋力+介助での可動域運動
• 痛み閾値内:疼痛が増悪しない範囲での実施
• 持続的伸張:最終可動域で15-30秒保持
• 方向性:制限方向を重点的にアプローチ
• 実施頻度:1日2-3回、各方向3-5セット
2. 自動運動拡大(4-6週目)
• 筋力向上:関節可動域内での筋力強化
• 協調性:複数関節の協調的運動
• 機能的運動:日常動作に即した関節運動
• 持久性:長時間・反復での可動域維持
• 実施頻度:1日3-4回、継続時間延長
3. 抵抗運動統合(6-8週目)
• 筋力+柔軟性:筋力強化と柔軟性向上の統合
• PNFストレッチ:固有受容性神経筋促通法
• ダイナミックストレッチ:動的な柔軟性向上
• スポーツ特異的:競技・職業特異的動作
• 実施頻度:1日2回、高強度での実施
アイウォークフリー活用拡大:
• 歩行距離延長:持久性向上による間接的効果
• 階段昇降:多関節運動による可動域向上
• 不整地歩行:環境適応による関節柔軟性向上
• 日常生活統合:実際の生活動作での可動域活用
Phase 3:機能回復期最適化(8週以降)
目標:
• 正常可動域の完全回復
• スポーツ・職業復帰レベルの柔軟性
• 動的柔軟性・協調性の向上
• 長期的な可動域維持体制構築
高度可動域訓練:
1. 最大可動域挑戦
• 最終域伸張:最大可動域での持続的ストレッチ
• 段階的負荷:重力・重錘を利用した伸張
• 温熱併用:温熱療法併用での効果向上
• 徒手療法:関節モビライゼーション
• 目標設定:正常可動域の90-100%達成
2. 動的柔軟性向上
• バリスティックストレッチ:反動を利用した伸張
• プライオメトリクス:爆発的動作での柔軟性
• スポーツ動作:競技特異的動作パターン
• 複合運動:多平面・多関節での運動
• 協調性:柔軟性+筋力+協調性の統合
部位別可動域改善手法
足関節可動域改善
背屈制限改善(最重要):
• 壁押しストレッチ:壁を利用した下腿三頭筋伸張
• タオルストレッチ:座位でのタオルを利用した背屈
• 重力利用:立位での重力による自然伸張
• アイウォークフリー歩行:歩行による動的ストレッチ
• 目標可動域:背屈20度以上の獲得
底屈・足趾制限改善:
• 前脛骨筋ストレッチ:膝立ちでの足背伸張
• 足趾屈筋ストレッチ:手指による足趾背屈
• タオルギャザー:足趾機能と可動域の統合訓練
• 歩行時背屈:アイウォークフリー歩行での背屈促進
• 目標:底屈45度、足趾背屈30度以上
膝関節可動域改善
屈曲制限改善:
• 大腿四頭筋ストレッチ:腹臥位・側臥位でのストレッチ
• 膝蓋骨モビライゼーション:膝蓋骨の可動性改善
• 壁滑り運動:壁を利用した膝屈曲運動
• 自転車エルゴメーター:無負荷での膝屈曲運動
• 目標可動域:屈曲130度以上
伸展制限改善:
• ハムストリングスストレッチ:SLR・座位前屈
• 後方関節包ストレッチ:膝関節後方への伸張
• 重力利用伸展:長座位での重力による伸展
• 歩行時伸展:アイウォークフリー歩行での伸展促進
• 目標可動域:完全伸展(0度)の獲得
股関節可動域改善
屈曲・伸展制限改善:
• 腸腰筋ストレッチ:ランジ肢位でのストレッチ
• 大腿直筋ストレッチ:トーマステスト肢位
• 臀筋ストレッチ:仰臥位・座位での臀部伸張
• 歩行時可動域:アイウォークフリー歩行での自然な可動域
• 目標:屈曲120度、伸展10-15度
物理療法・補完的治療法
効果的な温熱適用:
温熱療法の活用
• ホットパック:ストレッチ前15-20分の前処置
• 超音波療法:深部加温による組織伸展性向上
• パラフィン浴:手足の関節に対する均等加温
• 温浴:全身温浴による全身的なリラクゼーション
• 使用タイミング:ストレッチ・運動前の準備
電気刺激療法
筋電気刺激:
• NMES:萎縮筋に対する電気刺激による筋活動
• TENS:疼痛軽減による可動域運動促進
• 干渉波:深部筋に対する刺激・循環改善
• 実施条件:理学療法士指導下での安全な実施
• 併用効果:運動療法との併用による相乗効果
マッサージ・徒手療法
軟部組織モビライゼーション:
• 筋膜リリース:筋膜の癒着・短縮改善
• トリガーポイント:筋硬結部位への圧迫療法
• 関節モビライゼーション:関節包・靭帯の伸張
• リンパドレナージ:浮腫軽減による可動域改善
• 実施者:理学療法士・作業療法士による専門的実施
日常生活での可動域維持
アイウォークフリー使用中の工夫
歩行時の意識:
• 歩幅:可能な範囲での大きな歩幅
• 速度変化:ゆっくり・普通・やや速歩の変化
• 方向転換:様々な方向への方向転換
• 階段:手すり利用での積極的昇降
• 時間:1日複数回、合計60-90分の歩行
日常動作での活用:
• 家事動作:掃除・調理での関節使用
• 入浴:温浴効果を利用した入浴中ストレッチ
• 就寝前:リラックスした状態でのストレッチ
• 起床時:朝の軽いストレッチ・関節運動
• 休憩時間:デスクワーク中の関節運動
環境整備と用具活用
ストレッチ補助用具:
• ストレッチボード:足関節背屈ストレッチ
• ストレッチポール:体幹・股関節ストレッチ
• タオル・ベルト:自己ストレッチ補助
• バランスボール:動的ストレッチ・筋力訓練
• 階段・段差:日常環境でのストレッチ活用
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iWALKFree 3.0の関節ケア優位性
設計による利点:
• 身長150-195cm対応:個人の体格に応じた最適な関節角度
• 軽量アルミ構造:長時間使用での関節負担軽減
• クッション構造:関節圧迫軽減による快適性
• 調整機能:関節角度の微調整による最適化
よくある質問と専門的回答
Q: 関節が硬くなってしまった場合、元に戻りますか?
A: 早期発見・適切な治療により改善可能です。ただし、慢性化した拘縮は時間がかかるため、予防が最も重要です。
Q: 痛みがある時でも可動域運動は必要ですか?
A: 疼痛が強い急性期は無理をせず、痛みが軽減してから段階的に開始します。医師・理学療法士と相談して実施してください。
Q: アイウォークフリー使用中でも拘縮は起こりますか?
A: 患側は固定されているため拘縮のリスクはあります。しかし、早期活動と適切な可動域運動により、大幅にリスクを軽減できます。
Q: どのくらいの期間、可動域運動を続ける必要がありますか?
A: 基本的には完全回復まで継続が必要です。その後も再発予防のため、定期的な柔軟性維持運動を推奨します。
まとめ:関節の健康を守り、機能回復を促進
関節拘縮は予防可能で改善可能な合併症です。アイウォークフリーを活用した早期活動と、適切な関節可動域運動の組み合わせにより、関節の健康を守りながら機能回復を促進できます。
関節ケア成功のポイント:
• 早期からの予防的アプローチ
• 段階的・継続的な可動域運動
• 日常生活での関節使用意識
• 専門家による適切な指導
• 患者自身の積極的参加
関節の柔軟性は生活の質に直結する重要な要素です。適切なケアにより、元の機能レベル以上の回復を目指してください。
執筆者紹介
もっこすパパ |理学療法士・ケアマネジャー・公認心理師
理学療法士として15年以上、急性期から回復期、慢性期、在宅医療まで幅広いフィールドで患者支援に従事。医療・福祉の垣根を超えた支援を目指し、専門的な情報をわかりやすく発信している。